さえもんすたーの撮影秘話『堀川中立売』 その3 のぐちくん(野口雄介)
正義感殺人事件犯の「寺田」役の野口雄介。撮影時、厄介なヤツがいて大変だと噂になっていた。
とにかく言うことを聞かないと。メイクや衣装担当の子らも本気で困ってた。
ある日撮影の待ち時間に一人駐車場で音楽を聴きながらるんるんしていると、ノグチくんがフラフラな足取りで近付いて来た。
彼はこの映画への熱い思いをぶわ〜〜〜と語った。超ハイパーで、危険な臭いがした。
少年院に足を運んで犯罪者の心理を調べたり、2週間で7kg減量したり、彼は役作りに真剣過ぎて、
なんだか見ているとおかしくて笑っちゃうくらいの域に達していた。
それもそのはず、そのとき彼が撮影していたシーンは映画のクライマックスだったのだ。
そんときボクは、結構この人好きだわ〜 おかしいけど、と思った。
ノグチくんには誰よりも先が見えていたのだ。ということは出来上がった映画を見て誰もが納得した事実だと思う。
確信犯、ノグチに拍手を送りたい。
ノグチくんと撮影現場で話したのはたぶんこのとき一回きりである。
■野口雄介 Noguchi Yusuke
1978年 愛媛県生まれ。劇団・維新派の美術部に参加。08年維新派びわ湖水上舞台公演「呼吸機械」では役者を務める。映画は本作が初出演となり、富田克也監督作品『サウダーヂ』への出演へとつながる。
□寺田 Terada
少年の頃、俗に言う「福岡正義感殺人事件」という惨劇を巻き起こし、人間社会の敵No.1となった男。刑期を終え、単身京都に移り住む。人知れず、生きながらにして死んでいる生活を送っているが、加藤 the catwalk ドーマンセーマンに目をつけられ、加藤のあらゆる策謀により、悪意のプリンスの称号を戴冠させられることとなることを本人は知らない。