— 「悶☆カーニバル」楽しい映画上映会、日本で、山梨でここまでやってしまうのか! powered by ghost temple

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第3回上映会 アレハンドロ・ホドロフスキー監督作品『ホーリー・マウンテン』

2012年3月11日。湯村にある加牟那塚古墳の頂上で寝っ転がった。芝の効いた小高く丸まった墓の上で空を見ていた。太陽の光が顔を焼き、痛いほどだった。春なんだと思った。とにかく気持よかった。真っ青な空だった。空は変わらないなぁと思った。この変わらなさはなんだろう、と思った。芝を払って立ち上がった。見渡す限り、家が連なった甲府が見えた。遠くで富士が雲に巻かれていた。HOME、わが故郷。

「意味がわからない」「と思われます」「一言で言うと」。一人が感じたことを考えて伝えることも言葉の役割であった。多くの分野において分かりやすさが求められている。また、元から分かりにくいものも、分かりやすくあらねばならない、とされる状況にある。人を人と呼べないほどの、矛盾した公平性と正確性によって言葉が人を統治している。

「分かりやすい」には、「飲みやすい」「食べやすい」と似た匂いを感じる。やすいものに対する思いは、やはりやすい。感情が薄い。五感が効いてない。「本来はこれだけ○○なものがこんなに○○やすい」。考えてばかり、それも与えられたものを。言葉で。「本来」はどこに消えたのか。

2011年11月12日。宮城県本吉郡南三陸町、旧志津川町を流れる志津川で、生まれて初めて鮭が遡上する姿を見た。川底にはメディアが言う「震災がれき」が数多く沈んでいた。その中を鮭は産卵をするために戻ってきたのだった。そこに言葉はなかった。それこそ「本来」そのものなのだ。まじりのない生身そのものなのだ。数多くの人々が亡くなったことを思いながら、同じ生命が川を走っていることを思った。胸が震えた。

「本来」は、金にならないため消された。分かりやすくないから消された。ないことにされた。現代からは多くの「本来」が消された。生きるために必要な「本来」も消された。やすいものが爆発的に増加した。やすいもので世界が満たされた。感じさせられ、考えさせられる言葉に満たされた。不満を覚える者もいたが、現実を生きるために目をつぶることにした。ないことにした。ということも忘れた。忙しくなった。感じ、考える暇もなくなった。これが現実だ。

そして。無言が消えた。無音が消えた。色や形がなくなった。感情が消えた。思考が消えた。目をつむり、口をつぐみ、耳を塞ぎ、自分をごまかしながら、与えられた快楽や価値観を手に入れることの引換に、祈りを自ら奪ったのだ。

Alejandro Jodorowsky's "the holy mountain"

アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』に次ぐ今作『ホーリー・マウンテン』は聖なる山の頂上にいる8人の賢者を殺し、永遠の命を得ようとする欲深き人間たちの物語である。ある時は畏れ、ある時は祈りを捧げた「神」を殺すために、彼らは金を捨て、己を捨て、生死を捨て、力を合わせて聖なる山を目指す。

ホドロフスキーによる宇宙・生物・人類のなりたちやそれに伴う宗教観を背景にした、神を模造し、金に溺れ、偽善とごまかしが横溢した愚かな社会が、タロットカードや秘教主義、神秘主義を通して描かれる。コミカルでありながらシニカルに、刺激に満ちた表現でそれら一枚一枚をはがしていく。そして、衝撃のラストシーンそのものが聖なる山への入口であることを思い知らされることだろう。

Alejandro Jodorowsky's "the holy mountain" 02

「映画とは、詩であって欲しい」。ホドロフスキーは映画についてそう語った。この映画イベントを、「言葉」での祈りの時代に深く刻みたい。そして、今を生きる「夜の闇の国の星」(モブ・ノリオ)である来場者の皆さんと共に「本来」について語り合いながら、悶え苦しみながらも★になってカーニバルが出来たら最高だと思っている。

今回は、現実に背を向け、自ら聖性を失おうと迷走する現代と人類に警鐘を鳴らす小説家にしてアクティビスト、二回目の桜座登場となるモブ・ノリオと、一宮から宇宙へ羽ばたく率直中の率直な言葉と思いの塊集団、Stillichimiyaが登場。ホーリー・マウンテン=富士を抱く山々に取り囲まれた盆地の底、自らの手で再生し始めた甲府の中心で、放射性物質が故郷を台なしにしているこの2012年にこそ、頭を抑えつけられることを拒否し、現実を五感を研ぎ澄ませながら生きている、愛すべきならず者たちによる単刀直入な思いを感じながら、めちゃくちゃ「楽しい映画上映会」にしたい。それこそが悶★の悶★たる証(DNA)なのだ。

Ghost Temple
日向正親(ひなた・まさちか)

楽しい映画上映会「悶★カーニバル」
第三回上映会「チャンピオンズDNA」 2012年4月15日(日) 甲府「桜座

映画:『ホーリー・マウンテン』1973年メキシコ・アメリカ 35mm(上映はブルーレイ)117分
ゲスト:
Stillichimiya(一宮町・HipHop) http://stillichimiya.com/
モブ・ノリオ(奈良県桜井市・小説家) http://ghettomusic.seesaa.net/

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日時:2012年4月15日(日) 15時30分 開演16時 / 終演予定:20時頃
前売:3000円 当日3500円
主催:Ghost Temple
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15:30 開場
16:00『ホーリー・マウンテン』
18:15 特別講演 モブ・ノリオ
演題「俺を洗脳すんな、ボケ ~ KILL YOUR MELTDOWN GOVERNMENT ~」
19:15 Stillichimiya
20:00頃 終演

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チケット予約等お問い合わせは桜座またはGhot Temple(090-1244-9048)まで。

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